「emeraldblue」が目指すダイビングのかたち
『マリン事業・漁業・海洋保全』
全てが両立できるかたちを目指したい。
◆ダイビングと海洋保全◆
「ただただ海が好き。」
「ずっと楽しくダイビングができたらいい。」
私がダイビングを始めた頃は、正直なところ海洋保全の必要性なんてあまり感じていませんでした。
それから経験を積み、沖縄の離島や小笠原諸島など、遠く離れた場所へ遠征にいくようになると、少しずつ見える景色が変わってきました。
本土から何十キロも離れた海の真ん中。
透き通るような青い海に、ペットボトルやプラスチックごみが漂っている。「あれ…こんな場所にもごみってあるんだ。」
そのとき初めて、自分が思っていた以上に、海洋ごみ問題は深刻なのだと気付きました。
それまで見えていなかったものが、少しずつ見えるようになりました。
それでもまだ、この海の課題を「自分ごと」として捉えられていたわけではありません。
海洋ごみの現状は知っていても、自分の行動を変えるほどの実感までは、
持てていませんでした。
そんなとき、私のダイビングの師匠がいる沖縄で経験を積んでいるうち、
2人のステキな女性と出会いました。
1人は、水中ごみ拾い専門店「Dr.blue」の東さん。
東さんは、水中でのごみ拾いをダイビング体験の一つとして楽しく広めながら、回収したごみのアップサイクル体験まで行っています。
もう一人は、「TRUE BLUE」の玉村さん。
古宇利島に海洋ごみアップサイクル専門のアトリエを構え、海洋プラスチックを使ったキーホルダーやランプシェード制作体験、作品販売などを行っています。
私は海が好きで、ダイビングが好きで、インストラクターになりました。
でも、同じ海というフィールドで活動する人の中には、海を想う気持ちを形にし、課題解決に向けて行動している人たちがいる。
「私はただ海が好きなだけでいいのだろうか。」
そんなことを初めて真剣に考えました。
お二人との出会いは、私にとって大きな転機だったと思います。
そして今、私が大切にしていきたい牟岐町の海にも、多くの海洋ごみが流れ着いています。

たくさんの生き物たちの命があふれる豊かな海。
しかしその一方で、私たち人間が出したごみが漂い、生き物たちの命を脅かしている現実があります。
私は、この町の宝物である海を、できる限り美しいまま、未来へ繋いでいきたい。
そう思い「今できることから始めよう」と、牟岐町で回収した海洋ごみを活用したアップサイクル活動を始めました。

私一人がごみを拾ったところで、世界の海洋ごみ問題は解決しない。
海洋保全を掲げながら、こんなことを言うのは矛盾しているかもしれません。でもそれは十分わかっています。
それでも、私の活動を通じて海を好きになってくれる人が増えたら。
海の課題を知り、少しでも海洋保全に興味を持ってくれる人が増えたら。
そして同じ想いで行動してくれる人が少しずつ増えていったら。
その積み重ねは、きっと小さな変化につながっていくと信じています。

将来ダイビングショップを開業した後も、水中やビーチのクリーンアップ、海洋ごみのアップサイクル活動は続けていきます。
海の中のごみを回収できるのは、ダイバーだからこそできること。
海の恩恵を受けている私たちダイバーには、海を守る責任もあると
私は思います。
海を楽しむことと、海を守ること。
その両方を大切にできるダイビングショップを、いつか牟岐町で実現したいと思っています。
◆ダイビングと漁業◆
「この海は誰のものか」
そう問われたら、私は「誰のものでもない海であってほしい」と答えます。
けれど実際には、その海で暮らしを立てている人がいて、守り続けてきた人がいて、受け継がれてきた歴史があります。
それぞれに大切な営みがあり、想いがあります。
だからこそ、海をフィールドに生きる者同士 お互いを尊重しながら、
みんなが海の恵みを受けながら共存できる場所であってほしい。
私はそう願っています。
牟岐町は、かつて漁業で大いに栄えた町でした。

町には4つの漁協があり、多くの漁師さんが海を生業として生活していました。特に沖合の有人島「出羽島(てばじま)」は漁業の一大拠点として栄え、カツオ漁やマグロ漁を中心に全国有数の規模へと発展した歴史があります。当時は町の漁師さんたちが全国・世界の海へと漁に出ていた時代もあったと聞いています。
牟岐町にとって漁業は、単なる産業ではありません。
人々の暮らしを支え、町の文化を育み、この地域の歴史そのものを形づくってきた大切な営みです。
現在は高齢化や後継者不足などの課題を抱えていますが、今もなお、多くの漁師さんが海に出ています。
イセエビやアオリイカ、トコブシなどは牟岐を代表する特産品であり、伝統的な漁法や漁村の風景も受け継がれています。
そんな伝統ある漁師町にも、約10年前まではダイビングショップがありました。しかし、漁業者とマリン事業者との折り合いがつかなくなったことなどを背景にショップは閉業。
その後、牟岐町海域でのレジャーダイビングは、全面的に禁止とされてきました。
だからこそ、移住者の私が「この町でダイビング事業をやりたい」と言うことは、簡単な話ではないことは、最初から分かっていました。
それでも私は、牟岐の海には大きな可能性があると感じていました。
地域おこし協力隊へ応募する際、町役場に相談しました。
「将来、この町でダイビングショップを開業したい。そしてダイビングを牟岐町の新たな産業のひとつとして育てていきたい。そのために協力隊として活動させてもらえないか」
そして選考に入る前、牟岐町漁協の漁師さんたちと話し合いの場を設けていただきました。
私は、自分がなぜ牟岐でダイビングをやりたいのか、将来的にどのような形を目指しているのか、そして漁師さんたちにとって、プラスになる仕組みをつくりたいことを率直にお話ししました。
緊張でうまく話せなかった部分もあったと思います。
それでも漁師さんたちは最後まで耳を傾けてくださり
「協力隊になったからといって、ダイビングしてええという意味ではない。でも、できることからやってみ。」
そう言ってくださいました。
さらに、
「わしらがダメと言うときは理由がある。危なかったり、不具合があったりする。理由もなく反対するわけじゃない。この先もし反対意見が出たときは、ちゃんと理由があることを分かっといてほしい。」
私はその言葉を、とてもありがたく感じました。
反対されることが怖くないわけではありません。
でもその反対には理由があり、自分に見えていなかった課題があるかもしれない。
理由を聞き、懸念を理解し、一緒に解決策を考えることはできます。
私はこのとき頂いた言葉を、今でも大切にしています。
まずは私がどんな人間なのか知ってもらうこと。
そして「ただダイビングをやりたい」という想いだけで突っ走らないこと。
町でマリン事業をされている先輩にもたくさん助けていただきながら、
協力隊1年目は漁協や漁師さん、地域の方々との関係づくりを大切にしてきました。
町で獲れた未利用魚の活用や、夏季のスノーケリングガイドなど、海を活かした取り組みを進めながらも、
「どうすれば漁業の邪魔にならず、地域にとってプラスになるのか」を考え続けてきました。
漁師さんの立場になって考えれば、マリンレジャーに対して不安になる点はあるという事も、きちんと理解しています。
密漁の心配・漁場への影響・事故や安全管理の問題…
海は遊びの場である前に、誰かの生活の場でもあります。
だから私は、ダイビング事業を復活させることだけを目標にはしたくありません。
漁業があって、海洋環境が守られて、そしてマリンレジャーが成り立つ。
そんな『マリン事業・漁業・海洋保全』の全てが両立できる仕組みを、
この牟岐の海で少しずつ形にしていきたいと思っています。
emeraldblue 京華